「花(自然)」をモチーフに墨を使って描く、墨絵アーティスト朱梨。作品の基本となる書(書道)は5歳から学び始めたという。書道に魅せられた朱梨は、高校・大学においても書道専攻の学科を選び、徹底的に書の基本を学んだ。その成果として、2017年に行われた第58回熊日書道展(熊本日日新聞主催事業)において入賞を果たしている。
朱梨が自分の表現の場として選んだのが墨絵アートであるが、なぜ「花(自然)」がモチーフなのだろうか。祖母の影響で、幼い頃から花や植物に親しんできたという朱梨にとって、自然とは忙しなく過ぎる日常から離れ[ありのままの自分に帰る場所」だという。自然は朱梨にとって無くてはならない存在なのだ。
そんな朱梨が作り出す世界観は、朱梨の豊かな想像の中で紡ぎだされる。作品のもととなる「種」は頭の中に降りてくるインスピレーションであり、朱梨はそれを大切にしている。
インスピレーションはいつ沸いてくるか分からない。そのため彼女の枕元には、常にノートとペンが置いてある。寝ていても、必ずインスピレーションをメモしておくためだ。メモされたインスピレーションは後日、作品としてブラッシュアップされていく。
作品にしていく上で大切にしていることは、「ものに従うこと」だと言う。想いのまま描き出すものの、どの線を選び、どこの空間を選んで作り上げるかは、筆・墨・紙と対話をしながら作り上げるという。創作活動にも、大切な自然の原理が生かされているのであろう。
朱梨の作品は、女性らしい柔らかさに加え、掴みどころがないイメージを持つが、どことなく、強い芯を感じられて仕方ない。5歳から学び続けた「書」に対する紳士な気持ちの表れだろうか。
そんな彼女に今後の夢を尋ねてみた。「みなさんが見て心から温かくなる。単純かもしれないが、そういったことを大切にした作品作りをしたい」。取材の当日、古着の着物を羽織りに着てきた朱梨だが、独特の空気感とセンスをまといつつも、芯がある。そんな彼女らしい答えだ。
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第58回 熊日書道展 入賞
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